「お友達との距離が近すぎる」「話すときに相手の顔へぐっと近づいてしまう」「仲良くなると、すぐに抱きついたり触ったりしてしまう」——そんな子どもの様子に悩んだことはありませんか。
パーソナルスペース——。
それは、「近づきすぎ」を注意するだけでは伝わりにくいことがあります。大切なのは、自分の身体と相手の身体には、それぞれ大切な境界線があることを、日常の中で少しずつ伝えることでした。
我が家の息子も、人との距離がとても近い子です。相手の顔のすぐ近くまで行って話したり、男の子・女の子に関係なくボディタッチをしたり。本人には、相手を困らせようという気持ちはありません。むしろ「一緒に遊びたい」「大好き」「もっと仲良くなりたい」という気持ちが、身体ごと前へ出ているように見えることがあります。
でも、本人に悪気がなくても、相手が嫌だと感じることはあります。
そこで我が家では、単に「離れて」「触らない」と注意するのではなく、「触ってもいい?」と確認し合うルールを家庭に取り入れるようになりました。
今回は、発達グレーゾーンの息子にパーソナルスペースをどう教えているのか、我が家の実体験をご紹介します。
※この記事は我が家の子育ての実体験です。発達特性や適切な支援方法は一人ひとり異なります。
- パーソナルスペースとは何か
- 発達特性のある子どもが人との距離感でつまずく理由
- 「近いよ!」だけでは伝わりにくかった理由
- 家庭で実践している「触ってもいい?」のルール
- パーソナルスペースを教えるときに意識している4つのこと
- よくある質問(FAQ)
パーソナルスペースとは?相手によって変わる「心地よい距離」
パーソナルスペースとは、簡単にいうと、人が「これ以上近づかれると少し不快だな」と感じる、自分の周りの空間のことです。ただし、その距離は誰に対しても同じではありません。
| 相手との関係 | 心地よいと感じやすい距離感の目安 |
|---|---|
| 家族 | かなり近くても平気なことが多い |
| 仲の良い友達 | ある程度近くても大丈夫なことが多い |
| 顔見知り程度の相手 | 家族や親友より距離が必要になりやすい |
| 初対面・知らない人 | 近づかれると不安や警戒を感じやすい |
同じ相手でも、その日の気分や状況によって「今日は触られたくない」と感じることもあります。
だから私は、息子に「〇cm離れれば正解」と覚えさせるよりも、相手にも「近づいてほしくない」「触ってほしくない」と感じる気持ちがあることを理解してもらう方が大切なのではないかと考えるようになりました。
「近い!」を何度言っても、また近づいてしまう
息子は昔から、人が大好きです。初めて会った子にも話しかけます。楽しくなると、どんどん距離が縮まります。気づけば顔と顔がかなり近い。嬉しくなると身体に触れる。
親から見ると「近い……!」と思うことが何度もありました。そのたびに「近いよ」「もうちょっと離れて」「触らないよ」と声をかけていました。でも、しばらくするとまた近づいています。
最初は「何度言ったら分かるんだろう」と思っていました。
けれど、あるとき気づきました。「近い」という言葉だけでは、何が問題なのかを息子は理解しづらかったのかもしれない。
大人なら、「距離が近い=相手が不快に感じる可能性がある」と想像できます。でも息子にとっては、「僕はこの子が好き」「一緒に遊びたい」という気持ちの方がずっと分かりやすい。
そこで、「離れなさい」と行動だけを止めるのではなく、なぜ距離を取るのかを家庭の中から教えてみることにしました。
我が家の「触ってもいい?」のルール
我が家で大切にしているのが、人の身体に触れる前に「触ってもいい?」と確認すること。そして、これは息子だけに守らせるルールにはしていません。親である私たちも同じです。
たとえば、身体に触れる必要があるとき。「ここ、触ってもいい?」と聞く。息子が「嫌」と言えば、できる範囲でその意思を尊重する。逆に息子が私たちの身体に触れようとしたときも、同じように考えます。
なぜ親までやるのか。それは、「子どもだから大人に触られて当然」ではないことを、息子自身にも知ってほしいからです。
あなたの身体はあなたのもの。相手の身体は相手のもの。
家族でも、友達でも、それは変わらない。そんな感覚を、日常の中で少しずつ身につけてほしいと思っています。
「触らない子」にすることが目的ではない
ここは、私自身がとても大切にしているところです。
息子は、人との関わりが大好きです。好きな人には近づきたい。嬉しいと身体全体で表現する。それ自体を「悪いこと」「あなたは距離感がおかしい」と伝えたいわけではありません。
むしろ、その人懐っこさは息子の素敵なところでもあると思っています。
だから、「触っちゃダメ!」だけで終わらせるのではなく、「触りたいときは、相手に聞いてみよう」に置き換えるようにしています。
「好き」という気持ちを消す必要はない。
でも、好きな相手にも、その人自身の気持ちがあります。その二つを両方大切にする方法を、息子には知ってほしいと思っています。
パーソナルスペースを教えるときに我が家で意識している4つのこと
「ちゃんとして」「距離を取りなさい」「近すぎるよ」だけでは、息子には分かりにくいことがあります。そこで、「顔が近いから、一歩後ろに下がろう」「触りたいなら、先に聞こう」など、次に何をすればいいのかまで短く伝えるようにしています。
子どもだけに「勝手に触らない」と言いながら、大人が子どもの身体を当然のように触っていたら、ルールが分かりにくくなります。だから我が家では、親もできるだけ「触っていい?」と確認します。家庭を、他者との距離感を練習する最初の場所にしています。
「触っていい?」と聞くこと以上に大切なのが、「嫌」と言われた後です。嫌と言われても触り続けるのであれば、確認する意味がありません。「嫌って言われたらやめる」「今は嫌でも、あなたのことが嫌いという意味ではない」ということもセットで伝えています。断られることと、拒絶されることは同じではない。これも、少しずつ覚えていってほしいことの一つです。
相手の身体を大切にするだけではなく、息子自身の身体も大切にしてほしい。誰かに触られて嫌だったら、「やめて」「嫌だ」と言っていい。相手の「嫌」を尊重することと、自分の「嫌」を伝えること。パーソナルスペースを教えることは、この両方を学ぶことなのだと思っています。
「人との距離」を教えていたら、「自分を守ること」にたどり着いた
最初の目的は、もっと単純でした。「お友達に近づきすぎないようになってほしい」ただ、それだけでした。
でも息子と話しているうちに、少し考えが変わりました。これは単なる「お行儀」の問題ではないのかもしれない。人にはそれぞれ、ここまでは大丈夫。これは嫌。今日は触られたくない。という境界線があります。そしてそれは、息子にもあります。
だからパーソナルスペースを教えることは、「人に迷惑をかけないための練習」だけではなく、自分と相手の身体を尊重する練習でもある。今は、そんなふうに考えています。
それでもまだ、距離は近いです(笑)
ここまで書くと、息子が人との距離を完璧に取れるようになったように見えるかもしれません。全然そんなことはありません。今でも「近い近い!」となることはあります。楽しくなれば、距離感を忘れてしまうこともあります。
でも以前とは、一つ違うことがあります。「触ってもいい?」という言葉を、息子が知っていることです。
相手には「いいよ」と言う権利も、「嫌だ」と言う権利もある。そして自分にも同じ権利がある。
今すぐ完璧にできなくても、その感覚を少しずつ育てていけたら、それでいいと思っています。
よくある質問(FAQ)
- 子どもがお友達との距離を近づけすぎます。どう伝えればいいですか?
-
「近いよ」だけでなく、「一歩下がろう」「触る前に聞こう」など、具体的で短い言葉にすることをおすすめします。我が家では抽象的な注意より、次に取る行動を伝える方が息子には分かりやすいと感じています。
- ハグやボディタッチも禁止した方がいいですか?
-
一律に禁止する必要はないと考えています。我が家では「触ってもいい?」と相手に確認し、嫌だと言われたらやめることを大切にしています。相手や状況によって適切な距離は異なるためです。
- 家族の中でも「触っていい?」と聞いた方がいいですか?
-
我が家では親も実践しています。子ども自身にも「自分の身体について嫌と言っていい」という感覚を持ってほしいからです。ただし、安全確保や必要なケアなど、保護者が身体に触れる必要がある場面もあります。
- 何度言っても距離が近くなってしまいます。
-
一度説明しただけで身につくものとは考えず、その場で短く具体的に伝え続けることが我が家では現在進行形です。困りごとが強い場合や園・学校生活に大きな影響がある場合には、学校や支援機関などと相談しながら、その子に伝わりやすい方法を考えるのも一つの方法です。
今日伝えたかったこと
パーソナルスペースを教え始めた頃の私は、「人に近づきすぎないようにしなきゃ」と思っていました。
でも今は、「人との距離を守れる子」だけではなく、「自分と相手の身体を大切にできる子」になってほしい。そう思っています。
人が好き。近づきたい。触れたい。そんな息子の気持ちまで否定する必要はありません。その気持ちの隣に、「相手はどう感じているかな?」という小さな視点を一つ増やしていく。そして同時に、「自分が嫌なときも、嫌と言っていい」と伝えていく。
パーソナルスペースを教えることは、人から離れる方法を教えることではなく、自分と誰かを、どちらも大切にする方法を教えることなのかもしれません。息子と一緒に、私もまだその練習をしている途中です。
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