はじめに
この記事でわかること
この記事では、
- ADHDグレーゾーンの子どもが自己肯定感を失っていくときに見られた変化
- 「二次障害」という言葉を知って、親として考えたこと
- 自分を責め始めた息子へ、私が本当に伝えたかったこと
- 絵本をきっかけに、親子の対話が変わった体験
について、我が家の実体験をもとにお話しします。
発達グレーゾーンの子どもを育てていると、「どうしてできないの?」と困る場面だけでなく、
「どうして自分のことを、そんなに悪く言うの?」と胸が締めつけられる瞬間があります。
私は次第に、発達特性による困りごとだけでなく、息子が「自分はダメなんだ」と思い始めてしまうことを、何より怖いと感じるようになりました。
今日は、明るくて自信に満ちていた息子が、少しずつ「僕はできない」と言うようになった頃のお話です。
元々は、誰よりも明るい子だった
息子は、周囲の目をほとんど気にしない子でした。
初めて会った人にも笑顔で話しかける。
公園へ行けば、すぐに友達をつくる。
海の生き物や虫を見つければ、目を輝かせて夢中になる。
失敗するかどうかを考える前に、「やってみたい!」という気持ちで前へ進んでいく子でした。
周囲からも、
「明るいね。」
「元気いっぱいだね。」
と声を掛けてもらうことが多く、私はそんな息子を誇らしく思っていました。
でも、年齢が上がり、保育園や小学校での集団生活が始まると、少しずつ周囲との違いが目立つようになりました。
- 落ち着いて座り続けることが難しい
- その場の空気を読み取ることが苦手
- 力加減が分からず、相手を驚かせてしまう
- ルールを一度で理解することが難しい
もちろん、社会の中で生きていくためには、ルールやマナーを身につけることも必要です。
私も、そのことを否定したいわけではありません。
けれど、注意されたり、失敗したり、周りと比べられたりする経験が積み重なる中で、息子は少しずつ「自分はみんなと違う」と意識し始めていったように思います。
少しずつ増えていった「僕はできない」
ある頃から、息子の口癖が変わりました。
「僕はできないから。」
「どうせ失敗する。」
「僕はヘンテコだから。」
以前なら何も考えずに飛び込んでいたことにも、じっと周囲の様子を見てから、
「やらない。」
と言うようになりました。
できないことが怖いというよりも、失敗する自分を見ることや、誰かに見られることが怖くなっていたのかもしれません。
私はその変化に気づいていたはずなのに、本当の意味では受け止めてあげられていませんでした。
当時の私は、気持ちを通り過ぎてしまっていた
その頃の私は仕事が忙しく、毎日を回すだけで精一杯でした。
息子が、「僕はできない。」と言っても、
「そんなことないよ。」
「やってみたらできるよ。」
と返すことしかできませんでした。
励ましているつもりでした。前向きになってほしいと思っていました。
けれど今振り返ると、それは「大丈夫」という言葉で、息子の本当の気持ちを通り過ぎてしまっていたのかもしれません。
必要だったのは、すぐに否定することではなく、
「どうしてそう思ったの?」
「何か嫌なことがあったの?」
と立ち止まる時間だったのだと、今になってわかるようになりました。
ADHDグレーゾーンの子どもに起こり得る「二次障害」とは
交通事故をきっかけに、私は自分の働き方や家族との向き合い方を見直すようになりました。
「もっと息子の心を知りたい。」
そう思い、発達クリニックへ相談したり、発達支援に関する本を読んだりする時間が増えました。
そこで初めて知ったのが、「二次障害」や「二次的な困りごと」という言葉でした。
発達特性そのものとは別に、特性が周囲に理解されにくいことや、環境とのミスマッチ、繰り返される失敗、叱責、孤立などが重なることで、強い自己否定や不安、抑うつ、不登校などの二次的な困りごとが生じることがあります。一般に、こうした状態が「二次障害」や「二次的な困難」と呼ばれています。
もしかすると息子が苦しんでいたのは、発達特性そのものだけではなく、
「自分は普通じゃない。」
「僕はダメな子なんだ。」
と思い始めてしまったことだったのではないか。
もちろん、私は息子の状態を「二次障害だった」と判断できる立場ではありません。
ただ、この言葉を知ったことで、「僕はできない」という言葉を単なる弱気として流さず、息子の心からのサインとして受け止めるようになりました。
一番守りたかったもの
私は息子に、勉強が一番できる子になってほしいわけではありません。
運動が得意になってほしいわけでもありません。
もちろん、できることが増えればうれしいです。
けれど、それ以上に守りたいものがありました。
「自分を嫌いにならないでほしい。」
息子が今日笑っていること。
今日も元気に息をしていること。
好きなものを見つけて、夢中になっていること。
それだけで、十分に素晴らしい。
そのことを、どうしたら息子の心へ届けられるだろう。
私は毎日のように本を読み、動画を見て、息子に合う方法を探しました。
ガストンとの出会い

そんな中で出会ったのが、「ガストンのソーシャルスキルえほん」でした。
主人公のガストンは、感情によってたてがみの色が変わるユニコーンです。
怒ると赤。
悲しいと青。
うれしいと黄色。
感情には良いも悪いもなく、どんな気持ちも自分の一部であることを、優しく教えてくれる物語でした。
言葉で気持ちを説明することが難しい息子にも、ガストンの姿なら伝わるかもしれない。
そう思い、
『ガストンのソーシャルスキルえほん しっぱいしたっていいんだよ』
『ガストンのソーシャルスキルえほん かってもまけてもいいんだよ』
2冊の絵本を一緒に読むことにしました。
息子がガストンへ掛けた言葉

絵本を読み終えたあと、息子は静かに言いました。
「ガストンは優しいから、なかなか言えなかったんだね。」
「わざとじゃなかったんだね。」
その言葉を聞いた瞬間、私は涙が出そうになりました。
もしかすると息子は、自分自身にも掛けてほしかった言葉を、ガストンへ伝えていたのかもしれません。
わざと困らせたわけではない。うまく伝えられなかっただけ。自分でも、どうしたらいいか分からなかっただけ。
息子は物語の中のガストンを通して、自分の気持ちを見つめていたのだと思います。
その言葉を、息子へ返した
私は息子へ言いました。
「ぽんも、ガストンみたいになるときがあるよね。」
息子は静かにうなずきました。
「おんまはね、ぽんがガストンに言ってあげた言葉を、そのままぽんにも伝えたい。」
「なかなか気持ちを言えないときもあるよね。」
「わざとじゃない失敗もあるよね。」
「うまくできない日があってもいいんだよ。」
「みんな、失敗しながら少しずつ学んでいくんだよ。」
「そのままのぽんで大丈夫。」
息子は目を閉じ、少し安心したような表情で眠りにつきました。
その夜、どんな夢を見ていたのでしょう。
運動会でできなかったダンスを、笑顔で踊っていたでしょうか。
苦手だったボールを、思い切り投げていたでしょうか。
そんな夢を見ていてくれたらいいなと思いました。
少しずつ変わり始めた息子

今ではガストンの絵本は、息子にとって大切な存在になりました。
学校へ持っていくこともあります。
「今日はガストンみたいに頑張った。」
「今は黄色の気持ち。」
「今日は少し青だった。」
以前よりも、自分の感情を言葉で伝えてくれるようになりました。
もちろん、すべてがこの絵本で変わったわけではありません。
今でも「できない」と言う日もあります。
失敗を怖がる日もあります。
それでも、自分の気持ちを知り、誰かに伝えるための言葉が一つ増えたことは、息子にとって大きな変化でした。
昨日より少しだけ胸を張って学校へ向かう後ろ姿を見ながら、私は心の中でそっと拍手を送っています。
我が家で学んだ3つのこと
発達特性による困りごとに加えて、「自分はダメだ」という自己否定が重なると、子どもの心はさらに苦しくなってしまうことがあります。
結果だけを見るのではなく、存在そのものを認める言葉を伝え続けたいと思いました。
正論を何度伝えても届かないとき、絵本が心を開いてくれることがあります。
子どもは登場人物へ気持ちを重ねながら、自分自身の感情を整理することがあるのだと知りました。
ガストンは、息子にとって心を映す鏡のような存在でした。
「失敗しても大丈夫。」「そのままでいい。」
その言葉は、息子だけでなく、完璧を求めて自分を責め続けてきた私自身にも必要な言葉でした。
親子で一緒に、自分を許す練習をしているのかもしれません。
おわりに
私は今、息子に「普通になってほしい」とは思っていません。
それよりも、「自分を好きなまま大人になってほしい。」そう願っています。
発達特性そのものをなくすことはできないかもしれません。
でも、「自分は大丈夫」と思える心は、周囲の関わりや小さな成功体験の中で育てていけるのだと思います。
もし今、お子さんが、
「どうせ僕なんて。」
「私はできない。」
そんな言葉を口にしていたら、その言葉の奥にある気持ちにも耳を傾けてみてください。
子どもが自分を好きでいられるようにすることは、失敗をさせないことではありません。
失敗した自分も、うまくできない自分も、受け止めてもらえる。
そう伝え続けることなのかもしれません。
よくある質問
- 二次障害とは何ですか?
-
発達特性そのものではなく、特性への不理解や失敗、叱責、孤立などの経験が重なることで、不安、抑うつ、不登校、強い反発などの二次的な困りごとが生じることです。すべての子どもに起こるわけではなく、現れ方も一人ひとり異なります。
- 自己肯定感が下がっているサインはありますか?
-
「どうせできない」「僕なんて」「やらない」といった自己否定の言葉が増える、挑戦を避ける、以前より元気がないなどの変化が見られることがあります。一時的な発言だけで判断せず、変化が長く続いているか、日常生活へ影響しているかを見ることも必要です。心配な状態が続く場合は、学校や医療機関、発達支援の専門家へ相談してください。
- 子どもが「自分なんてダメ」と言ったら、どう対応すればいいですか?
-
我が家では、すぐに「そんなことない」と否定するのではなく、「そう思った出来事があったの?」「どんな気持ちだった?」と、背景を聞くようにしています。
- 絵本は自己肯定感を育てるのに役立ちますか?
-
子どもによって合う方法は異なりますが、物語を通して登場人物へ共感し、自分の気持ちを整理できることがあります。我が家では、ガストンの絵本が親子の対話のきっかけになりました。
今日伝えたかったこと
発達特性による困りごとだけでなく、「自分はダメ」という自己否定が重なることで、子どもの心が苦しくなることがあります。
子どもの自己否定の言葉は、叱ったり否定したりする前に、背景にある気持ちへ目を向けたいサインかもしれません。
絵本や物語は、言葉にできない感情を表現し、親子の対話を始めるきっかけになることがあります。
「そのままでいい」「失敗しても愛されている」という安心感が、子どもがもう一度挑戦するための力につながるのだと思います。
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