「何度言っても動かない」「さっき言ったことを、もう忘れている」「説明している途中で、別のことを始めてしまう」——そんなことはありませんか。
指示が通らないのは「言うことを聞かない」のではなく、情報量が多すぎて、大事な一言が埋もれてしまっていることが我が家では原因でした。
以前、朝の支度については、目で見える形にする「ホワイトボード習慣」で大きく変わった経験を別の記事に書きました。
今回はそれとは別に、「今すぐこの場で動いてほしい」という瞬間に効いた、言葉そのものの伝え方についてご紹介します。ホワイトボードのような視覚支援と、今回の「短く伝える」という聴覚面の工夫は、我が家では両方を場面によって使い分けています。
我が家の息子も、長く説明すればするほど、こちらの言葉が届かなくなることがあります。
たとえば食事中。椅子の上で片足を立てていたり、途中で立ち上がったり。以前の私は、「なんで座らないの?」「さっきも言ったでしょう?」「ご飯の途中で立つのはお行儀が悪いよ」と、理由まで丁寧に説明していました。
でも、話せば話すほど息子の意識はどこかへ行ってしまう。そこで、思い切って言葉を減らしてみました。「す・わ・る」「足、さげる」たったそれだけ。すると、長く説明していたときよりも、すっと身体が動くことが増えました。
- ADHDグレーゾーンの子どもに長い指示が伝わりにくかった我が家の経験
- 「短く伝える」ことで変わったこと
- 家庭で実践している5つの工夫
- 短い指示と怒鳴ることの違い
- 子どもが動かないときに見直したいポイント
「ちゃんと説明した方が伝わる」と思ってた
以前の私は、子どもには理由まできちんと説明した方がいいと思っていました。もちろん、理由を伝えることは大切です。でも息子の場合、今すぐ行動を変えてほしい場面で長く説明すると、途中から言葉が入らなくなることがありました。
たとえば、「ご飯を食べている途中で立つと、食事に集中できないし、みんなも落ち着いて食べられないでしょう。だからちゃんと座って食べようね」——ここまで言っている間に、息子の注意はもう別のところへ。こちらは一生懸命説明しているのに、本人には肝心の「座る」が届いていない。
それに気づいてから、我が家では「今してほしいこと」と「なぜするのか」を分けて伝えるようになりました。
我が家で実践している短い指示の工夫
| 工夫 | やること |
|---|---|
| ① 一度に一つだけ伝える | 複数の指示を並べず、一つずつ順番に伝える |
| ② できるだけ短い言葉にする | 文章にせず、必要な情報だけを渡す |
| ③ 「やめて」より「何をするか」を伝える | 禁止形ではなく、してほしい行動を言葉にする |
| ④ 言ったあと、少し待つ | 繰り返さず、身体が動くまでの時間を作る |
| ⑤ 落ち着いているときに「理由」を話す | 行動の瞬間は短く、理由は別のタイミングで |
① 一度に一つだけ伝える
以前は、「座って、足を下ろして、ご飯食べて、テレビ見ないよ」と、一度にいくつも言っていました。でも息子には、情報が多すぎました。
今は、「座る」できたら、「足、下げる」その次に、「ご飯食べよう」と、一つずつ伝えます。大人から見ると回りくどく感じるかもしれません。でも、一度に全部を求めるより、一つずつの方が息子には伝わりやすいと感じています。
② できるだけ短い言葉にする
我が家でよく使うのは、「座る」「足、下げる」「靴、履く」「ランドセル」「歯みがき」など。文章にしなくても伝わる場面では、できるだけ言葉を短くしています。
ポイントは、怒った口調で命令するのではなく、必要な情報だけを渡すこと。「なんでできないの?」「何回言ったら分かるの?」という気持ちは一度横に置いて、今、何をしてほしいのかだけを伝えます。
③ 「やめて」より「何をするか」を伝える
これは特に効果を感じています。たとえば、「立たないで!」ではなく「座る」。「走らない!」ではなく「歩く」。「騒がない!」ではなく「声、小さく」。
というように、してほしくないことではなく、してほしい行動を言葉にするようにしました。「やめる」だけでは、次に何をすればいいのか分からないことがあります。だから、「○○しない」より「○○する」を増やしています。
④ 言ったあと、少し待つ
これが意外と難しかったです。私は以前、「座って」と言った直後に動かないと、「座ってって言ったよ!」と、すぐ二回目を重ねていました。さらに「聞いてる?」「ほら、早く」と、どんどん言葉を足していました。
でも、それではかえって情報が増えてしまいます。今は、一度伝えたら少し待ちます。息子が言葉を受け取って、身体を動かすまでの時間を待つ。数秒でも、その間を作ることで動けることがあります。言葉を減らすことと、待つことはセットなのだと思うようになりました。
⑤ 落ち着いているときに「理由」を話す
短い指示だけで育てたいわけではありません。なぜ座って食べるのか。なぜ道路では走らないのか。なぜ人の話を聞くのか。そういう理由は、落ち着いているときに話します。
食事中に立ち歩いている真っ最中に「マナーとは何か」を説明するのではなく、その場では「座る」だけ。そして後で、「さっき、ご飯の途中で立ったよね。どうしたら食べやすいと思う?」と話します。我が家では、行動してほしい瞬間は短く。学ぶ時間は別に作る。この分け方が合っていました。
我が家でよく使う「短い指示」の例
| 場面 | 以前よく言っていた言葉 | 今の伝え方 |
|---|---|---|
| 食事中に立つ | 「ご飯中なんだからちゃんと座って」 | 「座る」 |
| 足を椅子に上げる | 「お行儀悪いから足を下ろして」 | 「足、下げる」 |
| 出発前 | 「早く靴履いて、遅れるよ!」 | 「靴、履く」 |
| 声が大きい | 「そんな大きな声出さないで」 | 「声、小さく」 |
| 廊下を走る | 「走っちゃダメ!」 | 「歩く」 |
| 片付け | 「遊んでないで全部片付けて」 | 「まずブロック」 |
我が家では、「できるだけ短く」「一つずつ」「次にする行動を伝える」の3つを特に意識しています。
「短く言う」と「怖く言う」は違う
ここは、私自身が気をつけていることです。「座れ!」「黙って!」「早く!」と強く言えば、それも短い指示です。でも、私が目指しているのはそこではありません。
必要な情報だけを、できるだけ落ち着いて伝える。「す・わ・る」「足、さげる」短いけれど、怒鳴らない。息子をコントロールするためではなく、情報を受け取りやすい形に整えて渡すという感覚です。
長い説明が悪いわけではなかった
この方法を始めてから、私は一つ誤解していたことにも気づきました。「長く説明してはいけない」ということではありません。息子は、生き物の話なら驚くほど長い説明を聞けます。好きなことなら質問もたくさんします。
つまり、言葉を理解できないわけではない。
ただ、朝の支度中。食事中。遊びから次へ切り替えるとき。すでに頭の中にたくさんの情報がある場面では、さらに長い説明を受け取る余裕が少ないことがある。そう考えるようになりました。
だから、「この子は話を聞けない」と決めつけるのではなく、今、この子の頭の中にはどれくらい余白があるだろう。そう考えるようにしています。
「なんでできないの?」を減らしたら、私も楽になった
短い指示に変わって、一番変わったのは息子だけではありません。私自身も少し楽になりました。以前は、「なんで?」「何回言えば?」「ちゃんとしようよ」と、注意するたびに感情まで乗せていました。だから、一回の注意だけで私自身がどんどん疲れていく。
今は、「座る」と言って、待つ。動けたら、それで終わり。
全部の場面を親子の話し合いにしなくてもいい。全部の失敗に意味を持たせなくてもいい。必要な場面では、必要なことだけ伝えればいい。そう思えるようになりました。
それでも動かないときはある
もちろん、短く言えば必ず動くわけではありません。疲れている。別のことに夢中になっている。眠い。不安が強い。そもそも本人にとって難しい。そんな日はあります。
だから、「短く言ったのに動かなかった」=「この方法は効かない」とも考えません。言葉以前に、今できる状態なのかを見る。難しそうなら、そばまで行く。視線を合わせる。一緒に始める。必要なら手伝う。指示の出し方を工夫することと、子どもの状態を見ることは別々ではないのだと思っています。
よくある質問(FAQ)
- ADHDの子どもには短い指示の方がいいですか?
-
子どもによって合う伝え方は異なります。我が家では、一度に複数のことを長く説明するより、一つずつ短く伝える方が行動につながりやすいと感じています。
- 一語だけで伝えると、命令口調になりませんか?
-
言葉の長さだけでなく、声のトーンや表情も大切だと思います。我が家では「座れ!」ではなく、「座る」「足、下げる」と、できるだけ淡々と伝えています。
- 理由を説明しなくても大丈夫ですか?
-
我が家では理由を説明しないのではなく、説明するタイミングを分けています。今すぐ行動してほしい場面では短く伝え、落ち着いてから理由や気持ちについて話しています。
- 何度言っても動かない場合はどうしたらいいですか?
-
言葉を繰り返すだけでなく、注意がこちらに向いているか、疲れていないか、指示自体が難しすぎないかなどを確認します。我が家では、そばに行ったり、最初の一動作を一緒に始めたりすることもあります。
今日伝えたかったこと
以前の私は、「ちゃんと分かってもらうためには、ちゃんと説明しなければ」と思っていました。でも息子との生活で、伝えることと、たくさん話すことは同じではないと知りました。言葉が多すぎると、大事な一言まで埋もれてしまうことがあります。
だから、「す・わ・る」「足、さげる」「靴、履く」必要な場面では、それくらいでもいい。そして少し待つ。理由を話すのは、後でもいい。
子どもに届く言葉を探すことは、「どうしたら言うことを聞かせられるか」を考えることではなく、「この子には、どんな形なら情報が届きやすいんだろう」と考えることなのだと思っています。
何度言っても伝わらないとき。もう一度強く言う前に、もしかしたら、言葉を少し減らしてみる。それだけで変わることもあるかもしれません。
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